2020年はCovid-19によって多くの人々が自分の「死」をイメージしたのではないでしょうか。私の初期の映像作品「an example01」は21歳の若さで痛ましいガンと闘病し亡くなった学友の死を元に制作しました。通常、宗教には「死をケアする優しいファンタジー」があるのですが、宗教からの離脱を決めた自分には、それがありませんでした。それに気づいて、自分のために死をケアする物語を科学的な視点を織り交ぜて「an example01」を作ったことが、私の制作の原点にあるのかもしれません。
これまで行ってきた「死と技術を巡る思索」を続けるにあたり、今回はSFや遠野物語、能楽といった、未来と過去を巡る「物語」を「死にまつわる技術」、または「死という概念を揺るがす技術」として捉えてみることにしました。
能では頻繁に登場人物が死者と出会い対話をします。様々な宗教や土着の思想が交雑した日本の中世からの「死をケアするファンタジー」を現在に伝えています。SF三巨匠の一人アーサー・C・クラークは「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」と言いましたが「ファンタジーはテクノロジーを纏うと実現する」と言い換えることができるでしょう。今回は通常「過去を語る」能を「未来を語る」SFとして観ることを提案しています。
<シテ>
出演:金春憲和『八島』、金春安明『伯母捨』(おばすて)」、森瑞枝 『花筐』、山中一馬『卒都婆小町』、金春安明『善知鳥』
映像編集:坂本麻人(THE LIGHT SOURCE/Whole Universe)撮影:田中和也
<ワキ>
出演:金春安明、森瑞枝
映像撮影:坂本麻人(THE LIGHT SOURCE/Whole Universe)、田中和也
寺田倉庫展示
設計協力:Fumihiko Sano Studio
施工協力:Anachro Co.,Ltd
機会提供:寺田倉庫株式会社、TOKYO CANAL LINKS実行委員会、TERADA ART COMPLEX Ⅱ
協力
JST-RISTEX ELSIプログラム プロジェクト企画調査『技術死生学プロジェクト』、同プロジェクト代表・渡部麻衣子(自治医科大学医学部・講師)
自治医科大学メディカルシミュレーションセンター
京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab、2020-21年度 京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab のDesign Researcher in Residence プログラムの成果の一環としても制作されました。